CDS

リーマン・ブラザーズが破綻しAIGが経営危機に陥ったのは、金融機関のビジネスを活性化させるために生み出されたCDSという金融派生商品が、逆にビジネスそのものを崩壊させるきっかけとなった。CDSにもいろいろな種類があるが基本パターンは次のようになる。

例えばA社が年利8%で社債を発行したとする。その社債を10億円購入したB社は投資銀行に赴き、A社を対象にしたCDSを買いたいと申込む。投資銀行はA社の保証料を5%に設定したとする。

その結果B社はA社から年8千万円の金利を受取るごとに、投資銀行に5千万円の保証料を支払うことになる。それでもB社は差額の3千万円が収入となり、万一A社がデフォルト(債務不履行)に陥っても、CDSで元本10億円は保証されているから安全・確実な投資となる。

00年以降から投資銀行は手許のCDS(定期的に保証料を受取る権利)をCDOに組成し、格付け会社のAAAを取付けて積極的に売り始めた。07年夏にはサブプライムローン問題が表面化し、株価下落や金融機関に対する破綻懸念が増大した。その結果、デフォルトを恐れる金融機関はCDSを購入するため投資銀行に殺到したという。

国際スワップデリバティブ協会(ISDA)の調べによれば、07年12月の想定元本の残高は62.1兆ドルにまで膨れ上がった。その後08年に入って残高は54.6兆ドルまで減少したが、それでも途方もない金額である。そもそも世界中のGDP(国内総生産)を全部合わせても約55兆ドルにすぎない。米国のそれは約14兆ドルである。

もしCDSで保証している企業すべてがデフォルトしたら、投資銀行はトータルで54.6兆ドルの支払義務が発生することになる。どこに54.6兆ドルものカネがあるのか。あるわけがないのである。金融工学の人たちがいう「百万年に一回」の事態が立て続けに起きて、CDSによる被害はどこまで広がるか予想すらつかない。最凶最悪の時限爆弾と化してしまったのである。

投資銀行はこのドン詰りに至るまでに法外な大儲けをして財を成している。彼等は危険きわまりないサブプライムローンCDSを含むCDOを中国や日本、欧州各国に売りつけて莫大な利益を上げた。例えばリーマン・ブラザーズでは、06年に支給されたボーナス額が全社員平均で、80万ドルにのぼったという。


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