リーマンショック

福田首相の辞意表明を受けて、自民党総裁選挙は08年9月10日告示、9月22日選挙という日程となった。この総裁選の最中の9月15日、米国証券業界第4位のリーマン・ブラザーズが総額6,130億ドル(約65兆円)という巨額の負債を抱えて経営破綻した。同社には堀江貴文村上ファンドを操り、ニッポン放送・フジテレビ買収を仕掛けた過去がある。さらに同日、業界第3位のメリルリンチバンク・オブ・アメリカ救済合併された。

翌日16日米政府とFRBが米国最大手のAIGに850億ドル(約9兆円)の公的資金を導入。政府が株式の80%を取得し事実上国有化された。29日米議会下院は不良債権買取りを内容とする「金融安定化法案」を否決しダウ平均株価が777ドル安を記録した。これをきっかけに世界中が歴史的な同時株安に見舞われた。

不正行為も厭わぬほど貪欲な米国金融資本は世界で獲物を漁りつくした挙句、サブプライムローンCDS(企業版の生命保険)・CDO(サブプライムローンCDS、ジャンク債、公債その他金融商品を組み合せ、切り分けられ、混合された証券)を考案して、とうとう米国民自身の生活を襲ったのである。CDOを大量に保有する世界の金融市場は疑心暗鬼に襲われ急速に凍りつき、深刻な信用収縮に陥ってしまった。

サブプライムローンとは米国内の低収入の人にも家が買えるよう細工したローンだ。「不動産価格は上がり続ける」という思惑から「返済ができなくなったら買った時よりも値上がりしている家を売れば大丈夫」と積極的な貸付を推進した。さらに01年9月の同時多発テロからの低金利政策や減税などの優遇政策によって住宅バブルは人工的に過熱させられた。不動産が好調なら住宅資材も売れる。家が売れれば家電も自動車も売れる。住宅バブルは個人消費を牽引する機関車となった。

とはいえ、貸倒れの危険が高いローンであることは貸手側もよくわかっている。そこで住宅ローンの返済金を担保にローンそのものを証券化(CDO)して投資家向けの商品に組替えて転売する手法が考え出された。銀行やローン会社は住宅ローン担保証券を売却することで、ローンが完済されるまで何十年も待つことなく、現金を回収してさらなる新規のローンを組むことが可能となった。さらに詐欺的な要素が加わった。

高リスクなCDOを組成した投資銀行(日本の証券会社に当る)は、自社商品が円滑に売れるようにムーディーズやスタンダード&プアーズなどの格付け会社からAAAの最高評価を買収して権威づけし、ローリスク・ハイリターンと誤認させることに成功した。こうしてサブプライムローンという毒を背負った証券化商品が世界中に蔓延してしまったのである。

問題はあまりにも証券化が重ねられた結果、どの商品に何がどのくらい含まれ、どの程度のリスクがあるのか誰にもわからなくなり、実際の損失額が確定できないことである。04年8月米国証券取引委員会(SEC)が投資銀行に課していたレバレッジの上限を大幅に緩和したことも損失を飛躍的に拡大させた。破綻したリーマン・ブラザーズは、最後は30倍のレバレッジを効かせていた。つまり、手許の1千億ドルで3兆ドルの取引が可能だったのである。


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