洞爺湖サミット

08年7月7日から「地球温暖化防止・CO2抑制」をテーマとして洞爺湖サミットが開催された。G8が進めてきた金融投機資本主義を放置しておいてよいのかという問題であり、地球温暖化問題の根本もここにある。サミットの結果に、欧米のメディアはG8の指導者全員が本気で防止についてリーダーシップを取らず、具体的な数値による抑制策が合意されなかったことで、失敗であったと報道した。

政権浮揚策にことごとく失敗した福田首相は8月1日夜、内閣改造に踏切った。福田と距離をおく麻生太郎を口説いて幹事長に起用、さらに増税派の与謝野馨を経済財政担当大臣に就任させた。福田が麻生に幹事長を要請する際、「政権の禅譲を密約した」という情報が流れた。二人は否定したが、仲介した森・元首相のテレビ番組での思わせぶりな発言で定着した。マスコミの多くは「二人だけの密室で首相交代が決まる時代ではない」と反発した。

この改造内閣で注目されたのは、公明党の対応である。冬柴鉄三国土交通相が斉藤鉄夫環境相に交代した。さらに福田は公明党代表太田昭宏に「公明党から女性を一人増やして入閣させたい」と要請したが断られた。公明党が福田から距離を置きはじめ、政局緊迫の火種となった。

また福田は臨時国会を8月中に召集したいと自公の与党に要請したが、公明党は9月下旬の召集にこだわり福田の意向は再三にわたって無視された。さらに公明党の主張する「所得税・住民税の定額減税」を08年度内に実施することになり、バラマキを嫌う福田にとって耐え難い屈辱となった。加えて8月29日、臨時国会の召集を9月12日とすることに止むを得ず合意した。

9月1日の夜9時半、突然首相官邸で緊急記者会見を開いた福田は辞意を表明した。側近にも知らされない孤高の決断であった。ある地方紙の記者の「首相の会見がひとごとに聞こえるが」という質問に「私は自分自身を客観的に見ることができるんです。あなたとは違うんです」と逆ギレまでした。かくして、わが国では一年間に二人の首相が政権を投出すという悲劇が発生したのである。

10年11月ウェブサイト「ウィキリークス」が福田と米国との間に起きた軋轢を暴露した。ブッシュ大統領洞爺湖サミット時に「アフガニスタンに大型輸送ヘリコプターCH47の派遣か、軍民一体の地域復興チームの派遣」を強い調子で要求した。福田は「陸上自衛隊の大規模派遣は不可能」と返答。それでもブッシュはサミット直後の7月15日アジア担当国防次官補を日本に派遣しアフガン支援を要求した。しかし福田は立場を変えることはなかった。

これだけではない。ブッシュはサブプライムローンで経営危機に陥った政府設立の民間企業・住宅金融機関ファニーメイフレディマック2社の社債数兆円を、日本政府が買い支えるよう強要したのである。8月幹事長から財務相となった伊吹文明が慎重論を主張し、9月の福田退陣表明で政府が機能不全に陥ったため、実現しなかったといわれている。福田は自分の首と、自衛隊の海外派遣および数兆円の資金提供を引換えにして、日本の国益を守ったのである。

米政府は9月7日2社に対する公的資金注入を決定した。福田の「あなたとは違うんです」は「小泉とは違うんです」だった。と私は思っている。


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