AIGが救済された理由

とんでもないレバレッジを積上げたCDO(金融派生商品)が世界中にバラまかれた。その総額はBIS(国際決済銀行)のデータによると683兆ドル(5.5京円)である。金融危機の発生後ブッシュ政権や09年1月発足したオバマ政権がFRBと共にいったいいくらのカネを使ってきたか。09年2月オバマは7,870億ドルの景気対策法案に署名した。だが、これとは別に金融安定化の名のもとでこれまでも巨額公的資金が投入されていた。

例えば、ベア・スターンズに290億ドル、ファニーメイ、フレディ・マックに4,000億ドル、AIGには総額で1,800億ドル、ゴールドマン・サックスシティグループバンク・オブ・アメリカ等の銀行・証券業界救済に3兆ドル、ローン証券の買上げに8,000億ドルを投入した。因みにオバマの500万人の雇用を創出する「グリーン・ニューディール政策」のために準備した予算は僅か1,500億ドルにすぎない。

しかし、事実上の国有化となったGM、破綻したクライスラー、そしてフォードにも巨額の資金が投入された。08年9月以降米国は17兆ドルという途方もない金を費やした。これにより景気の先行きに明るい兆しが見えただろうか。答えは「ノー」だ。ブラックホールへ吸込まれるように、巨額のドルが消えていっただけだった。

その消えていった金はどこから捻出されたか?米国の金融安定化法案、景気対策法案の財源は、米国人が現在から将来へ向けて収める税金であり、米国債である。日本が米国債を買い続けるポチ政権である限り、知らぬ間に日本人も借金漬けにされていく。何より問題なのは、世界各地でバブルを仕掛け富を得た人々が何らペナルティを払わず、損失を人々の税金で賄おうとしている状況だ。

その典型例がAIG救済である。AIGの屋台骨を揺るがしたのはロンドンにあるAIGFPという子会社で、銀行など金融機関を相手にCDS取引による保証を売っていた。その一部が大きな評価損を出し、AIG本体の08年第一四半期の決算は78.1億ドルという膨大な赤字となった。さらに格付けが下がったことで100億ドルを超える担保の追加を求められ一気に資金繰りが悪化したのである。

リーマン・ブラザーズ関連の巨額の債権を所有していたゴールドマン・サックスは、その保全のためAIGFPとの間でCDS契約をしていた。ゴールドマン・サックス出身の前財務長官ポールソンは公的資金を投入してAIGの倒産を防いだ。このAIG救済策を主導したのはNY連邦銀行であり、その時の総裁はオバマ政権の財務長官ガイトナーである。AIGへの初回公的資金900億ドルの支払の内、その大半を受取ったのがゴールドマン・サックスであった。

AIGは総額1,800億ドルの公的資金を受けながらAIGFPの社員に対し、2億1,800万ドルのボーナスを支払った。会社が危機に陥る前の契約を履行しただけという説明は、米国民を激怒させた。


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