国家興隆期の戦争は、偉大な文明を生んだのです。

戦争というものは何であろうか。犠牲者は戦場の兵士だけではない。古来、民の苦
しみは戦争より甚だしきはない。しかし人の心を感動させる多くの芸術が戦争から                                                                                生まれたことも否定できない。

紀元前480年ギリシャ艦隊がペルシャ艦隊を破ったサラミスの海戦の時の「ペリクレ
ス」は20歳、1588年イギリス艦隊がスペインの「無敵艦隊」を破った時の「シェー
クスピア」は25歳でした。戦前の優れた人々を思いおこすと、民族の興隆期に少年、                                                                              青年時代を過した人々の多いことに気づきます。

日本海海戦の年の「若山牧水」は20歳、斉藤茂吉は23歳、石川啄木は19歳だった。
志賀直哉は22歳、芥川龍之介は13歳、菊池寛久米正雄は芥川と殆ど同学年である。
「この道」「からたちの花」を作詞した北原白秋は20歳、作曲した山田耕筰は19歳。
「赤とんぼ」を作った三木露風は16歳だった。

燈し火近く衣縫う母は  春の遊びの楽しさ語る  居並ぶ子供は指をおりつつ
日数かぞへて喜び勇む  囲炉裏火はとろとろ外は吹雪

囲炉裏の端に縄なふ父は 過ぎし戦さの手柄を語る 居並ぶ子供ねむさ忘れて 耳を傾けこぶしを握る 耳を傾けこぶしを握る  
                                                                                                                     日露戦争後小学唱歌に採用された歌である。気負わない日常的な描写のなかに、そ
の時代の民族の自信と充実感が感じられます。
私もこの歌の情景を思い浮かべると、子供の頃を思い出し思わず涙してしまいます。

以上 岡崎久彦著「小村寿太郎とその時代」から抜粋しました。

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