トリックを使って参謀総長兼任

44年(昭和19)2月6日マーシャル諸島のクエゼリン島、ルオット島の守備隊6800
人が玉砕。次の米軍の狙いは日本海軍最大の基地トラック島であろうと予測します。
2月10日連合艦隊司令部は、一隻の空母もなく決戦を躊躇、旗艦「武蔵」以下を日本
パラオに引揚げさせます。これがトラック島を守備する陸軍将兵に衝撃を与えます。

2月17日から米軍の機動部隊(大型空母5隻、軽空母4隻、戦艦6隻、巡洋艦10隻)の
攻撃が開始され、17日18日の爆撃で航空機270機、艦艇9隻、輸送船42隻が大破
・撃沈され食糧2千トン、燃料1万7千トンが焼失、6百以上の兵士が死傷。同島に
近づいていた第52師団の輸送船団も攻撃を受け兵士1200人が海中に消えました。

2月18日夕方官邸で、トラック島の戦況を聞いていた東条は統帥(軍令)に口出しでき
ない苛立ちから、国務と統帥が別では戦争はできないと、同夜富永恭次陸軍次官・佐
藤賢了軍務局長を呼び出し、参謀総長兼任の意志を告げその根回しを命じます。

陸相参謀総長教育総監本部長の改造人事は現職三人の合意で後任を指名する慣例
から、根回しを命じられた二人は午後9時過ぎ教育総監本部長の山田乙三を説得。午後10時東条は内大臣木戸幸一の私邸を訪ね自らの意思を伝えます。19日午前木戸は天皇に伝えますが、統帥権独立にふれぬかと質されます。14時東条は参内し自説を説明。

富永は杉山参謀総長を訪ね、東条の参謀総長兼任に同意されたいと申出ます。杉山は
抵抗したが、三長官会議開催の提案には同意します。だが杉山は山田が既に承諾して
いることは知らないのである。この間東条は嶋田海相軍令部総長兼任を説得。17時
半東条は木戸に杉山総長は承知せりと虚偽報告、嘘とは知らぬ木戸はこの旨を上奏。

19時半陸相官邸で緊迫した三長官会議が開かれます。東条は杉山を暗に脅します。「
自分は天皇に信頼されている、あなたが不同意というなら、天皇に信頼されている私
は辞めなければならない」と。山田も説得に回り、杉山は今回限りとしぶしぶ同意。
日米開戦により天皇の信頼を裏切っておきながらこの強弁には、ただただ唖然、呆然

東条の参謀総長兼任以降、大本営の虚偽発表はますます誇大になり、戦場では将兵
に実情を無視した命令が伝達され、戦陣訓による死傷者が累々と増大するばかりでる。


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