大蔵省と日本マスコミの正体

96年11月7日橋本改造内閣がスタートした直後、厚生省事務次官岡光序治が特別養護老人ホーム補助金交付に便宜を図った見返りに利益供与を受けたとされ、大きな社会問題となった。その岡光に退職金を払おうとしたのが、厚相小泉純一郎である。

「官僚が辞職するのは武士が切腹するのと同じである。退職金を払ってどこが悪い」と擁護した。厚生省はこれに深く感謝して、小泉を総理にする会をつくって応援する。岡光は控訴、上告、上告棄却の後、03年懲役2年、追徴金6,369万円の実刑判決を受けた。

97年6月23日米国を訪れた橋本首相のコロンビア大学での講演後、フロアから質問があった。「過去20年、円に対するドルの価値は半分近くまで下がったが、日本はそれでも米国債を持ち続けるのか」橋本は「ここにFRBやNY連銀の方はいないでしょうね」と笑わせてから

「実を言えば、米国債を大量に売りたい誘惑にかられたことが何度かあった。カンター氏とやりあった時や、ドルが大きく下落しているのに米国が放置していた時だ」この発言が伝えられるや米国株価は192ドルの大暴落となった。

橋本は日本にもカードがあるとほのめかし、無理難題はほどほどにとやんわり警告したのである。橋本発言を評価する声がEUにあったのは、彼等も米国の横暴を感じていたからだ。

解せないのは日本のマスコミが「失言」と決めつけて「不用意」「軽率」「うっかり」と批判したことである。日頃日本のマスコミは、日本の政治家の存在感のなさ、国際的発言力のなさを慨嘆していた筈なのに、いざ発言力を行使すると慌てふためいて外国に気を遣うのはなぜなのか?

最も慌てたのは大蔵省だった。首相の名前で「誤解を招いたのは遺憾、真意は違う」と訂正コメントを発表、三塚博蔵相も次官も「これまで一度も売ろうと思ったことはないし、今もそうだ」と釈明に努めた。しかし、首相の発言を蔵相や官僚が即座に否定するのは、国際信用を失う行為である。米国を恐れ迎合する大蔵省の正体がクッキリ見えた瞬間であった。

最も肝心なことは、日本政府は米国債をどの位保有しているのか?100兆円なのか?あるいはそれ以上なのか?大蔵省(財務省)は現在に至るも公表することはないのである。

90年代半ばに起きたアジア通貨危機。タイのバーツが標的になったこの時、米国のヘッジファンドは返還間近の香港ドルにも手を伸ばそうとした。返還を前に不安定な香港経済は、香港ドルの投機売りで簡単に混乱する。中国政府は米国に「米国資本が香港ドルを売り浴びせるなら傍観しない。中国は保有する米国債を売払ってその資金で香港ドルを買い支えるだろう」と通告した。

財務省が介入。ヘッジファンドに香港から手を引くよう説いたのだった。中国はこうして着実に国内の製造業を育てていった結果、00年以降、猛烈な経済成長を記録していく。


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