瑕疵担保特約

99年再生した長銀は民間に売却されることになった。金融再生法により任命された柳沢伯夫金融大臣は政府の代理人として、米国の大手証券ゴールドマン・サックスを指名。何故代理人を置いたのか、一切説明されていない。財務長官だったルービンやサマーズなどの関与が取りざたされている。ルービンはゴールドマン・サックスの会長を努めた人物である。(以下ゴールドマン社と省略)

長銀買取りにいくつかの金融機関が名乗りを上げたが、選ばれたのは投資会社リップルウッドで、長銀の全株式が10億円で引渡された。11兆円を超える資産を持つ巨大銀行の売却が10億円とは、余りにもベラボウだが、決めたのは代理人ゴールドマン社である。リップルウッドのティモシー・コリンズはゴールドマン社の共同経営者だった人物である。つまり、強盗と警備会社が仲間だったようなものである。尚、代理人ゴールドマン社に支払われた仲介手数料も10億円であった。

森喜朗政権下の00年6月長銀は、新生銀行と名を改め外資系銀行としてスタートした。01年10月、新生銀行が年600億円の利益を上げたと報じられると「さすが外資だ」「非効率な邦銀は見習え」との声が挙った。実は新生銀行の高利益は経営努力の成果ではない。邦銀が持たない特権「瑕疵担保特約」を持っていた。長銀から引継いだ債権が3年以内に2割以上下落した時は、国に買戻しを請求できる権利である。

仮に破綻の原因が追加融資を断るなど新生銀行にあったとしてもそれは問題にならない。とすれば危なくなってきた債権は、サッサと借手を破綻させて価値を下げた方が得である。新生銀行長銀がメイン・サブメインであった上場企業等を次々に破綻に追い込んだ。ライフ、第一ホテル、マイカル、そごう、ハザマ、熊谷組----200社以上に及ぶ。しかも国に引取らせた企業が転売に供されると新生銀行リップルウッドなど関連企業がその買収に名乗りを上げた。

リップルウッド傘下の投資組合ニューLTCBパートナーズ(本社はオランダとされる)は04年2月の東証一部再上場時と05年1月の二回にわたり、新生銀行株約70%を売却し、5,400億円という巨額の売却益を手にした。しかし、これだけの利益をあげながら1円の税金も納めていない。

それは、日本・オランダ間の条約にはオランダの会社が日本で行った株式取引で利益をあげた場合、その課税権はオランダにあると規定されているからである。では彼等はオランダで納税したのか?これもまた回避している。同国国内法では、自国の法人が外国での投資で利益をあげても課税しないことが定められている。実に見事と言いたくなる。

米国政府や米国金融資本の要求に行過ぎがあるとしても、自国の利益を守るのは当然の行為である。当然でないのは、その要求に唯々諾々として盲従する日本政府・大蔵省(財務省金融庁)・日銀そして米国批判が一切できない日本マスコミの存在である。


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