小渕政権の緊急経済対策

小渕政権スタート早々、金融再生と経済回復を最優先課題として掲げ、事実上橋本改革を否定した。橋本政権の16兆円に続き総額24兆円に及ぶ緊急経済対策を打ち出した。橋本政権が約束していた恒久減税6兆3千億円が実施された。それぞれ25万円、4万円の上限があるものの、所得税の20%住民税の15%を削減する定率減税である。しかし恒久減税の筈なのに小泉政権は06年に半減、07年に全廃する。

減税の補完として、公明党の主張を入れた地域振興券7,700億円がばら撒かれた。課税水準に達しない世帯主などを対象に、15歳以下の子供がいれば2万円の商品券を配布したのである。しかし高所得の家庭にも配られた。選別にコストがかかり緊急性との兼合いもあった。翌年企画庁は振興券はGDPを0.1%増加させたと発表した。

中小企業のための貸し渋り対策として公的な信用保証を拡充した。銀行が借手に保証融資を受けさせて、自身の融資を回収するという事例もあったが、多くの企業が無用な資金繰り倒産から救われたのである。この対策で倒産件数は著しく減少した。その後増加に転じたのは、長銀(新生銀行)の瑕疵担保特約がらみの大型倒産が相次いだ影響である。

小渕政権が懸命に経済対策に取組む中、日銀は金融緩和を望む政権の希望を無視した。ついに速水優総裁も金融危機と経済悪化に抗しがたく、99年2月ゼロ金利に踏み切った。この結果、預金金利はとことん下がっても貸出金利はそこまで下げないので、銀行は過去最高の利ザヤを稼いだ。本来なら預金者の金利収入となる分が銀行の利益に化けたのである。

橋本改革以後、金融危機対策に約70兆円、景気対策に約60兆円、合計130兆円に上る資金が使われた。橋本改革は株価を12,879円まで下落させたが小渕政権は00年2月2万円台を回復した。

景気回復の結果、税収が増加した。98年99年は40兆円台に落ちていたが、00年50.7兆円を回復した。景気対策財政支出の増加によって財政を悪化させる元凶とされてきたが、財政支出の拡大が逆に財政を改善したのである。00年4月残念ながら小渕首相は突然脳梗塞に倒れ、森政権に引き継がれる。


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