格差の拡大

03年の巨額為替介入から、輸出製造業を中心に企業業績は大きく改善したが、売上は必ずしも伸びていない。売上に比べ利益が大きく伸びたのは厳しいリストラのためである。大企業の目覚しい業績回復の裏には、切捨てられた従業員、追詰められた下請企業、見捨てられた地元経済という大きな犠牲があった。

永年、会社に貢献した従業員や、下請企業や、地元経済を切って捨てた日産自動車カルロス・ゴーン社長を英雄のように祭上げたとき、日本の企業社会は壊れてしまった。かって、不況のときには労働分配率が高まり、配当や役員報酬を犠牲にしても雇用を維持したからである。しかし、いまや正社員を減らして安く使える非正規の従業員を増やしたこともあって、労働分配率は減少したが配当や役員報酬は大きく増加した。

75年から00年までの役員報酬は一般従業員の2.5倍だったが今では5倍である。「企業は株主のもの」という考え方が急速に広まりそれが世界の常識とされ、小泉・竹中路線が日本的経営は不透明・非効率と批判し、日本企業の従来のシステムを壊すことを「改革」と叫んだのである。

また好業績の大企業でも従業員の平均給与はこの10年、1%しか上がっていない。7割以上の労働者が所属する資本金1億円以下の中小零細企業では、平均給与は16%も下落した。

この最大の原因となった労働者派遣法を最初に導入したのは小渕政権だが、当初は通訳などの専門職だけだった。今日のワーキングプア問題の元凶は、小泉政権が製造業への派遣を規制緩和したことにある。企業は安い労働力を手に入れたが国民生活は破壊された。いまや非正規労働者の割合は全体の3分の1に及んでいる。彼等の賃金は正規労働者の4割にも満たない。小泉は多くの青年から明るい未来と夢を奪ってしまったのである。

小泉政権になって「格差」は急速に拡大した。生活保護世帯が100万を超えた。小泉は国会で格差問題について「格差はいつでもある。格差があることは悪いことではない」と答えている。だが、この発言だけで為政者の資格のないことを露呈している。格差をできるだけ埋めることこそ、政治の役目なのではないか?

「一億総中流」と言われたかっての日本はもはやない。「勝ち組」「負け組」という表現が、公の場で用いられる社会に日本はなってしまったのである。


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