100年安心

この数年ほど年金への関心が高まったことはかってなかった。このおかげで年金会計の問題が次々と明らかになった。あまり利用されない赤字の保養施設、グリーンピアの建設は年金保険料の無駄遣いと知られているが、実は事務費という名目で隠された人件費、天下り官僚の給与や退職金の総額はその何倍にも達し、流用は併せて10兆円にも及んでいる。

社会保険庁の経費は一切税金から支出すると定められているが、いつのまにか年金の保険料が流用されていることも明らかになった。こんな流用は厚生省の独断でできることではない。仕掛けたのは旧大蔵省である。流用を可能にしたのは、97年橋本政権が成立させた「構造改革特別措置法」である。大蔵省はこの法案に、年金事業等の事務費に政府の負担以外の財源を充てることができるという条文を滑り込ませていたのである。

その特措法の期限が切れる03年、財務省は一見無関係な「公債発行特例法案」に再び流用を認める条文を潜り込ませた。社会保険庁の官舎や公用車に年金保険料を流用したことを強調すればするほど、問題の中心から逸れていく。厚労省だけ叩いていると主犯の財務省が見えなくなる。彼等は財務省の権限の自由度を確保するために、国民の安全と安心を犠牲にしてきたことを忘れてはならない。

04年6月、小泉内閣強行採決した年金改革は「やっぱり」給付を減らし保険料を上げる改革だった。これまでもすべて、給付を減らして保険料を引き上げる年金改革である。「これで100年安心」とはよく言えたものである。特に「マクロ経済スライド調整」はインフレ率に比例して年金を増やすのを今後はやめるという話で、年金改革といいながら、中身は財務省主導の財政改革なのである。

07年8月米国のサブプライム問題で住宅バブルが崩壊し騒然としていた08年5月経済財政諮問会議の民間メンバー伊藤隆敏が「日本の公的年金の利回りが低いのは、制約が多く機動的運用ができないせいだ」「そこでこれをいくつかのファンドに分割し競い合わせる。海外にも複数の運用拠点を置く」「ファンドの理事・役員には外国人も排除すべきではない。高額な報酬を払ってでも優秀な人材を確保し運用判断も委ねるべきだ」という売国提言をした。

この提言は舛添要一厚労相が慎重姿勢を示してペンディングになっているが、無くなった話ではない。米国絶対服従財務省は実現のチャンスを秘かに狙っている。この提言の4ヶ月後の9月15日、米証券業界第四位のリーマン・ブラザーズが総額6,130億ドル(約65兆円)もの巨額な負債を抱えて経営破綻した。だからこそ日本国民は年金積立金230兆円と郵貯簡保マネーの安全運用を注視しなければならない。


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