後期高齢者医療制度

問題は、郵政選挙で勝ち誇った小泉首相が06年6月に強行採決で成立させた「医療制度改革関連法」である。06年10月から70歳以上の高齢者で現役並みの所得がある人の自己負担を3割に引上げるなど、負担増を求める内容であったが、国民から厳しい批判を受けたのが「後期高齢者医療制度の創設」である。

しかも、保険料を年金から天引きする仕組みのため、高齢者を中心に「平成の姥捨山制度」と、強い抵抗が全国で展開された。高齢者の生存権を侵し、戦前・戦中・戦後と日本の苦難と発展に、懸命に努力した人々を冒瀆する制度である。自民公明政権の存続に関わる問題となった。

後期高齢者医療制度が導入されたのは08年4月、福田政権になってからだが、桝添要一厚労相は公費で5割、他の保険が4割を負担して、75歳以上の高齢者の負担は1割だけと説明するが、なぜわざわざ別にしたのか、保険でカバーする高齢者医療の範囲を狭めるためではないだろうか。そもそも保険は多くの人々が参加してこそリスクが分散され、それだけ支える力が大きくなるのである。

73年から70歳以上の高齢者の医療費は無料になっていたが、83年有料化に戻し定額負担、01年には1割の定率負担になった。さらに02年現役並みの所得者は2割負担に引上げられ、09年度から70歳から74歳までの前期高齢者の自己負担を1割から2割に引上げる方針となった。

高齢化の進展で日本の医療費が巨額に膨らんでいる、という小泉政権の宣伝を多くの国民は疑っていない。しかしこれも嘘だった。日本の医療費は世界の中で極めて低水準にとどまっている。日本国民一人当たりの医療費をGDPとの比較で見ると、日本はOECD加盟国の中で21位、主要国の中では最下位である。日本の医療費はむしろ低い、低過ぎるというべきである。

日本は平均寿命だけでなく、健康寿命も世界一である。WHOが計測を始めて以来、日本はずっと世界一位だ。しかし、現在のような医療費削減では、これを維持できるかどうか危ぶまれている。高齢化の進展は世界一と厚労省は宣伝しているが、医療費は世界的に見て異常なまでに、抑制されているのである。医療財政の危機は、殆どまやかしなのである。


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