57年ぶりの衆院再議決

米国FRB議長グリーンスパンは、米国政府自作自演の同時多発テロが起きた01年9月から03年6月にかけて「FFレート」を3.5%から1%にまで引下げた。バブル景気の自作自演である。果てしない膨張ぶりに慌てたグリーンスパンはその火消しに努め、04年6月からFFレートを上げはじめ06年6月には5.25%としたのである。

グリーンスパンからバーナンキに代る直前の06年1月末、グリーンスパンは「米国の財政赤字貿易赤字は、制御できなくなった。それだけではない。米国の投機資本家たちの制御も不能となった」という重大発表をした。投機のみを目的にした巨額マネーが駆け巡り、世界で1日に行われる貿易決済に必要なカネは8兆円であるにもかかわらず、1日の為替出来高が300兆円もあるという異様な状況が生まれていた。

米国の金融機関が信用力の低い層に貸出す住宅ローン「サブプライムローン」が大量に焦付き、米住宅金融大手の経営危機が07年3月に表面化し、日本国内の景気低迷に拍車がかかった。さらに07年11月28日福田内閣を揺さぶる大事件が起きた。前防衛事務次官守屋武昌収賄容疑で逮捕された。「山田洋行」に便宜をはかる見返りに約300回計1,500万円にものぼるゴルフ接待を受けていたというのである。

インド洋で対テロ作戦を展開する米艦船などに給油するための根拠となる法律が、01年11月に施行された「テロ対策特別措置法」である。それが07年11月1日に失効するのを前にして、延長継続するための新法の成立を政府は急いだ。しかし民主党大連立構想の秘密協議をマスコミから批判され、自民党との裏交渉を一切拒否していたため説得が不可能となり、海上自衛隊はインド洋から撤退するという事態となった。

12月14日臨時国会は31日間再延長された(最初の延長は安倍政権が行っている)。正月をまたぐ異例のことである。08年1月11日午前、参院は「新テロ法案」を否決した。衆院に返付され与党の自民党公明党は、同日午後ためらいもなく再議決を断行した。57年ぶりの再議決であった。各種の世論調査はすべて「新テロ法」の再議決に過半数が反対だったが、読売新聞はじめマスコミや有識者の批判は少なかった。

民意に配慮するのが民主政治である。再議決という憲法上の手続きがあるとしても、政治的正当性がなければ憲法に反する判断である。福田は議会政治に悪しき例を残したのである。この衆院での福田の強行採決に対して、民主党代表小沢は徹底して抵抗するどころか本会議採決を途中退席して大阪府知事選・熊谷貞俊の応援にでかけてしまった。

大阪での街頭遊説を終えた小沢は、その日の夕方同行した新党日本代表田中康夫を伴い、京都に入り馴染みのお茶屋「一力」で息抜きしていたことが後に知られるところとなった。これを敵前逃亡として民主党内外から批判と不満が噴出した。福田も小沢も人気を落とすことになったのである。尚、大阪府知事選は橋下徹が当選し熊谷は次点落選。インド洋での給油は2月21日から再開された。


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