みなし否決

06年2月1日米国FRB議長に就任したバーナンキは、07年9月から08年3月にかけてFFレートを5.25%から2%とした。この金利急低下でまた市場には大量の資金が出回ることになった。この資金は原油穀物市場の投機資金となって世界中を徘徊した。我々が理解すべきは景気動向は「FRB議長の動きによってどのようにでも操作できる」ということである。08年春から原油高騰をはじめとする生活関連資材の値上がりが日本を襲った。

臨時国会が閉会して3日後の、08年1月18日通常国会が召集された。この国会の最大の争点は暫定税率廃止問題だった。道路建設・整備を維持する道路特定財源のためのガソリン税暫定税率(リッター当り約25円・年間約2兆6千億円)が4月に失効するのに伴い、道路族に支えられた福田政権は租税特別措置法改正案を提出して、その継続を主張した。

ねじれ国会を活用した野党の攻撃は、道路官僚をはじめとする税金浪費の実態を国民の前に明らかにした。3月末までに租特法改正案が成立せずガソリン暫定税率が34年ぶりに期限切れとなり廃止となった。このためガソリンはリッター当り25円の値下げとなった。原油高騰による値上げラッシュが続いていたため多くの国民が歓迎した。

これに対して福田は4月30日衆院で与党3分の2の多数でみなし否決し(参議院で否決したものとみなし)再議決した。いったんはガソリン価格の値下げを経験した国民にしてみれば、強硬手段で再値上げした福田は悪者以外の何ものでもなかった。

06年6月に小泉内閣強行採決で導入を決めた、評判の悪い後期高齢者医療制度が08年4月1日に施行された。批判を受けるなら小泉であるはずだが、制度スタート時に首相の座にあった福田に矛先が向けられた。姥捨て山を強行した最悪の首相として国民の目に福田は映ったのである。加えて消えた年金問題で「最後の一人まで解決する」という公約の真の解明は絶望的な状態になった。

08年4月末から連休中に行われたマスコミ各社の世論調査は、福田内閣の支持者が著しく低下し、民主党への支持率が自民党のそれを大幅に超えたのである。これまでは内閣支持率が下がっても野党第一党の支持率が上がることは殆どなかった。どの調査も「民主党を中心とする政権が望ましい」が他を大きく引離している。ただし問題は「民主党政権担当能力があるかどうか」にある。

尚、野党は後期高齢者医療制度廃止法案を参院に共同で提出し、会期末の6月6日に可決して衆院に送付したが衆院では継続審査となった。自公与党は制度の骨格を変える必要はないとして、法改正しない範囲の変更を目指している。


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