時価会計の緩和

資本原理主義の旗振り役だった米国が、破綻した金融機関をいとも簡単に救済した。かってアルゼンチンで、韓国で公的資金の注入を認めずIMFを送り込み、グローバル・スタンダードを迫ったにもかかわらず、自国に危機が迫った時は都合よくルールを変える。その一例が時価会計基準の緩和である。

かって日本は橋本政権下、ビッグ・バンと称する米国の要求に沿って時価会計とBIS基準を導入した。それはグローバル・スタンダードを遥かに超えて無用な厳格さで施行され、金融機関の機能を低下させた。株価と地価が下落する中での時価会計と8%の自己資本維持は、金融機関の自己資本を減少させ、貸渋り・貸剥しを激化させ、バブルとは無関係な健全企業まで資金繰り倒産に追いやり、大量の失業者を発生させた。

09年4月2日米国財務会計基準審議会(FASB)は、金融資本家たちの圧力に屈し、時価会計基準の緩和を決定した。要するに不良資産を隠すことが公式に認められたのである。サブプライムローンCDSを取り込んだ証券化商品(CDO)などの不良資産を計上する時、取得価格の70%程度の評価額にしてもよいというのだ。

具体的には、現在は取得価格に対して15%程度の価格が相場になっており、それでも買手がつかない商品がゴロゴロしている。これらの不良資産の取得価格が100億ドルであった場合、時価会計で15億ドルにしかならない資産を70億ドルとして計上する結果、実際の損失額を極端に少なく見積もった決算書が発表されることになった。

ゴールドマン・サックスシティグループバンク・オブ・アメリカなどが09年第一四半期の決算を発表した。ナント黒字決算であった。日本では「公的資金を注入されたばかりなのに?」と驚きをもって迎えられた。特にゴールドマン・サックスは、2四半期ぶりの黒字で18億1,400万ドルの純利益を発表し、レベル3という不良資産の塊りを660億ドルから590億ドルへと減らした。

これでNYダウ工業平均株価は09年3月9日の6,547ドルから10年11月24日の11,036ドルと見せかけの回復基調に乗った。しかし実際はFRBと金融資本家が結託し「実体経済が回復するまでの時間稼ぎ」という名目を盾に、借金の先送りをしたにすぎない。ゴールドマン・サックスは株価上昇のタイミングを見計らって50億ドルの増資を行い、公的資金の返済に動いた。

同社の会長兼CEOロイド・ブランクファインの本音は、FRBの監視下から一刻も早く離れ、再び市場で好き放題をやりたいのである。ゴールドマン・サックスが今も収入の50%を役員のボーナス資金として確保しているにもかかわらず、同社出身者が主要ポストに陣取っているオバマ政権は、強い態度に出られないままでいる。


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