傲岸不遜

09年9月16日衆参両院で鳩山由紀夫民主党代表は、首班指名を受け首相に就任した。菅直人を副総理・国家戦略担当相に指名し、総選挙で民主党を大勝利に導き、得意の絶頂にあった小沢一郎を幹事長とした。鳩山政権は脱官僚、政治主導をスローガンに官僚主導の政治の変革を試みる。

12月10日、日米中等距離外交論を唱える小沢は民主党国会議員142人を伴って中国を訪問した。秘書や後援会関係者を合わせると600人規模の訪問団で「朝貢外交」と揶揄された。国会議員一人ひとりと胡錦濤主席との握手と写真撮影は中国側が難色を示していたが、小沢の強い要望により実現した。これは小沢本人が実力者であることを内外に誇示するための示威行動にすぎなかった。

その直後(14日)に来日した中国の習近平国家副主席が1ヶ月ルールを破って、15日天皇陛下と特例会見を行った。去る11月26日中国側から会見の要請があり、日本側は一旦は断ったものの中国側は重ねて要請するという経緯があった。この時、会見断念に傾いた鳩山に小沢が電話で「いったい何をやっているんだ!」とゴリ押ししたという。

会見実現で習近平副主席はライバルに差をつけ胡錦濤国家主席の後継者は自分であるという印象づけに成功した。同時に中国は民主党政権は圧力を加えれば、国内ルールを破ってでも従ってくると学習したのである。特例会見が決まった12月12日、宮内庁長官羽毛田信吾は記者会見し「陛下に心苦しい思いでお願いした。二度とこういうことがあってはならない」と述べ「陛下の政治的利用につながるという懸念を持っているか」という記者の質問に対し「大きく言えばそういうことだ」と述べた。

中国、韓国を歴訪して帰国した小沢は、この発言について14日記者会見を開き「政府の一役員が憲法の精神、理念を理解していない。羽毛田長官は辞表を出して言うべきだ。また陛下のお身体が優れないのであれば他の行事を休ませるべきだ」と、まるで陛下に対して「こうしろ」と言わんばかりの発言をした。

さらに、「天皇陛下ご自身に聞いてみたら『会いましょう』と必ずそうおっしゃると思うよ」と陛下のお心を勝手に決めつけ代弁するような発言もしたのである。絵に描いたような傲岸不遜、増上慢ぶりである。権力欲に囚われている小沢は「俺は天皇さえ動かせる」と自己陶酔に溺れていたのである。

14日鳩山は首相公邸前で記者団に「間違っていなかった」と明言した。翌日習副主席について「国民挙げてもっと喜びの中でお迎えすべき」「1ヶ月ルールに何日間か足りないからといって、お役所仕事のようにスパッと切るようなことで、外交的な話が良いのかどうか----」と述べた。外務省幹部は米政府側に「鳩山首相の言うことを余り真に受けないで----」と説明したという。24日中曽根元首相は「あの程度の時間的ズレは認めていい」と語った。


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