参院選大敗

10年6月2日鳩山首相は「国民は聞く耳をもたなくなった」と言って辞任の意向を明らかにした。理由には普天間基地の移設問題で社民党の連立離脱を招いたこと、政治とカネの問題で迷惑をかけたこと、小沢一郎に幹事長辞任を促して了解を得たことを明らかにした。加えて「首相を辞めた人が影響力を行使してはいけない」と首相辞任後の政界引退を表明した。

鳩山が小沢を道連れに辞任したことに、世間は好意的に評価した。読売新聞が6月2・3日に行った世論調査では、鳩山の首相辞任について66%が、小沢の幹事長辞任についても87%が当然であるとした。

ところが鳩山は「国益に資する政治を行うため、皆様の期待を戴けるなら次の衆院選でも行動を共にしたい」と述べ、首相辞任時の引退表明を撤回した。その上、後任となった菅直人を様々なかたちで批判するのみならず、度々国益を損なう発言を繰り返す。結局、鳩山は12年12月16日の衆院選に出馬しなかった。「辞めるの止めた」「辞めないを止めた」この鳩山の余りにも軽すぎる食言には只々唖然とするばかりだ!

6月2日鳩山内閣の副総理だった菅直人民主党代表選出馬に手を挙げた。3日の記者会見で批判を浴びていた小沢について「暫くは静かにして戴いたほうが本人にも民主党にも日本の政治にとってもよい」と述べ小沢から距離を置くことを明言した。4日小沢グループに支持された樽床伸二との間で代表選が行われ、菅が圧勝した。7日には幹事長に枝野幸男を指名し、8日には鳩山内閣の居抜きのかたちで組閣を終えた。

鳩山から菅へのスイッチは政策面で様々な影響を及ぼす。鳩山や小沢はマニフェストに従い増税を忌避したが、1月から財務相を兼任していた菅は、財政的規律を重視するようになる。背景に国債が暴落したギリシャ経済危機があった。6月17日菅は参院選マニフェストを発表する記者会見で、消費税増税について「自民党が提案している10%を参考にさせて戴く」と具体的数値までも述べた。

菅は功を焦って増税の入口を間違えた。与野党で合意して増税を進めたいのであれば、結論を先に口にするのではなく、今後の財政のあり方について検討する場を設けてから行うべきであった。同調すると思っていた自民党は反発した。結局、菅は消費税10%導入の根拠や目的について二転三転し、世論も菅の発言に厳しい反応を示した。内閣支持率は僅か一ヵ月で発足時の64%から50%と急落する。

参院選が始まると菅は「次の総選挙まで一円たりとも上げない」と前言を撤回した。7月11日に行われた参院選の開票結果は、民主党は10議席減の44議席にとどまり、自民党は13議席増の51議席となった。特に一人区を巡る両党の戦いは、前回07年の参院選民主党の23勝6敗であったものが、今回は8勝21敗となった。政権交代から一年近く経って、民主党の政策そのものが現実性に乏しいものと理解されはじめていたのである。


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