中国漁船衝突事件----②

10年9月24日那覇地方検察庁の次席検事・鈴木亨は「日本国民への影響や今後の日中関係を考慮すると、これ以上の身柄拘束を続けるのは相当ではない」という理由で中国漁船の船長を処分保留のまま釈放した。菅首相と前原外相が国連総会出席のため不在中に、地検が外交的配慮に基づく判断を下したというのだ。姑息な仙石由人官房長官は記者会見で「地検独自の判断だ。それを了とする」と繰り返した。

これは中国側には、恫喝によって日本側の妥協を引出した外交的勝利として記憶されることになる。失われた国益は計りしれない。24日夕、自民党政調会長石破茂は「検事がこんなことを言っていいのか。あらゆる泥を被るというなら、首相臨時代理である仙石氏が言えばいい」と指摘した。

25日未明、組しやすしと見て図に乗った中国外務省は日本に「強烈な抗議」として謝罪と賠償を要求してきた。なんという厚顔無恥!中国は弱い相手には徹底的に強く出る国なのである。同日午後外務報道官談話で「尖閣諸島が我国固有の領土であることは、歴史的にも疑いない。領有権問題は存在しない。謝罪や賠償といった中国の要求は何ら根拠が無く、全く受け入れられない」と表明した。

25日鳩山前首相は京都市内で記者団に「証拠として早く漁船衝突時のビデオを見せるべきだった」「私が首相当時は温首相とのホットラインがあった。事件直後に菅首相が腹を割って議論すればよかった」と政府の段取りの悪さを批判した。同日夜、訪米から帰国した菅首相を最初に出迎えたのは、首相官邸前に陣取った市民団体の抗議のシュプレヒコールだった。

29日午前の定例記者会見で、仙石はこの事件に関し「中国様はあまりお変わりになっていない」という認識を示した。9月13日の記者会見でも「船長を除く14名と船がお帰りになれば、また違った状況が開けてくるのではないか」と述べていた。何故、仙石は中国に対しオカシナ敬語を使うのか。一体どんなトラウマがあるのか、何かのコンプレックスがそうさせているのか、実に不思議である。

幹事長代理を辞めて無役の細野豪志が仙石の要請により、密使として29日訪中した。細野は北京で戴秉国・国務委員らと会談し、日中間の緊張緩和に向けた条件を話し合った。戴秉国は漁船衝突の際のビデオを公開しないこと、仲井眞沖縄県知事を含む公人を尖閣諸島へ上陸させないことなどを要求したとされる。しかし細野の訪中は個人的なものとされ、政府はその公的位置づけを一様に否定した。

日本政府の一連の弱腰外交を観察していたロシアのメドベージェフ大統領は、29日北方領土・国後に「必ず行く」と明言した。菅は何の根拠もなしに「大統領が具体的に訪問するとは受け止めていない」と述べた。菅はこの時点で特使をモスクワに派遣すべきであった。何ら努力をしない無作為が悔やまれる。

10月1日某省の政務三役は「衝突ビデオを見た。間違いなくぶつけてきている。あれは公開しちゃいけない。日本人があれを見たら『中国人ふざけるな』と国民感情が燃え上がっちゃう」と言い放った。冷静で良識的な自分達が判断するから、国民はそれに従えばいいと言わんばかりではないか。おまえら何様だ!!


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