中国漁船衝突事件----③

中国人船長を釈放するのであれば、菅首相か、せめて仙石官房長官が「政治の判断でそう決めた」と正直に語るべきである。しかし政府は「地検の判断だ」を繰り返し責任を負おうとしない。衝突のビデオ映像についても「現場が適切に判断するだろう」と誤魔化し続ける。10年10月1〜3日に行われた読売新聞の世論調査に、民主党政権の外交安全保障政策に不安を感じるかという設問があり、「大いに感じる」「多少は感じる」を合せて84%に達した。

10月12日衆院予算委員会自民党政調会長石破茂は、政府のビデオを公開しない理由である「裁判の証拠物件」と繰返していた矛盾点を突いた。窮した仙石は「出さないなんて言ったことはありません!」その後も「国会に提示することはやぶさかではないが、時期がいつか、どのような開示が行われるか配慮しなければいけない」などと答弁していたが、遂に11月1日衆参予算委員会で一部議員に限定してビデオ映像を公開した。

同じ1日、メドベージェフ大統領は国後島を訪問し北方領土がロシア領であることを世界に誇示した。大統領は行かないとの駐ロシア大使の情報を鵜呑みにした結果であった。連邦議会下院選を翌年に控え同大統領は国内向けに強いイニシアティブを示す必要があった。日本には11月13日から予定されているAPEC首脳会議前のタイミングで行くことは考えにくいという甘い見通しがあった。

巡視船乗組員が撮影した漁船衝突ビデオは、11月4日庁内の情報システムを通じてビデオを見た神戸海上保安部の海上保安官一色正春が、ネットカフェから密かに動画サイト「YouTube」へ投稿するという情報漏洩によって、突然一般に公開された。11月10日一色は名乗り出て任意聴取に応じた。激怒した仙石は「治安に関与する職員が情報を故意に流出させたとなれば由々しい事案」と述べた。

これは事件発生直後に公開していれば起らなかった問題である。重大なミスを犯した菅や仙石にこそ責任があるのだ!一色は真のサムライであると、私は心から賞賛している。この際、侵略国家・中国がどういう蛮行を繰返すか、国際社会にどんどんアピールすべきである。一色は11年1月起訴猶予となる。

11月13日横浜でAPEC首脳会議が開かれ菅は、中国国家主席胡錦濤との会談で相手の目を見ることもなく、手元のメモを見ながらオドオド会見した。胡に恐れおののく惨めな菅の醜態が世界に晒された。まさに国辱!! 菅は鳩山前首相と同じく、外交や安全保障の厳しい本質を理解せずに、首相の地位を射止めた幸運な政治家の不幸な限界を露呈したのである。

国会議員であれば務まる人物でも、大臣になると馬脚を現し辞職に追い込まれる人物があとを絶たないように、人間の能力が限界を越えると、地位にそぐわない失敗を犯すことを国民は、特に有権者は忘れてはならない。首相の器にはほど遠いものの、幸運に恵まれた、麻生太郎鳩山由紀夫菅直人が連続して選出されたため、日本は世界の軽蔑・嘲笑を買うことになった。


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