稚拙外交続く

元首相で党最高顧問・鳩山由紀夫は、12年4月8日核開発疑惑を巡って日本政府が欧米諸国と協調して制裁圧力を強めていたイランに、野田首相の制止を振切って強行訪問し、アフマディネジャド大統領らと会談、日米間に緊張を走らせた。

イラン国営プレスTVは早速「鳩山氏がIAEAについて、イランなど特定国を不公平に扱っていると批判した」と伝えた。鳩山は「捏造だ」と強調するが、最初から明々白々だったイランの宣伝工作に乗せられ、日本外交を貶めた。いかに鳩山本人が「個人」「一議員」を強調しても、関係各国は「背後に日本政府の意向がある」と受止めることを、理解できないらしい。過剰な民主党オーナー意識のなせる業と言うべきか。

駐中国大使・丹羽宇一郎は、12年5月4日訪中した衆院議長・横路孝弘全人代常務委員会副委員長・李建国との昼食会に同席し、日本国内で石原都知事による尖閣諸島の購入表明を支持する意見が多数を占めることに「日本の国民感情はおかしい」「日本は変わった国なんですよ」と述べた。また、丹羽は作家の深田祐介の取材に「将来は大中華圏の時代が到来します」「日本は中国の属国として生きていけばいい」と驚くべき発言をしたという。

「実行されれば日中関係に重大な危機をもたらすことになる」と批判した丹羽の発言に対し、石原は6月7日「知らない。言わしておけばいい」と不快感を隠さずに言い放った。丹羽の発言を「不適切であった」としているにも関わらず6月19日野田内閣は「召喚、処分等の措置をとることは考えていない」と免責する答弁書閣議決定した。

10年6月の丹羽の中国大使起用は、菅政権の外相・岡田克也が「政治主導」で進めた話であり、ここで丹羽を処分したり更迭すると岡田に恥をかかせることになる。丹羽は伊藤忠商事出身であるが「伊藤忠は中国で仕入れた食料をイオンに卸している」(外務省筋)という関係もある。

専門家でも何でもない民間人丹羽の起用は「日本は領土問題を含む政治的課題よりも経済関係を重視する」というメッセージとして中国に受止められた。既に役割を終えたODAを日中改善のため「続けるべきだ」と主張するなど、中国側の意向ばかりに配慮を示し、不規則発言が多過ぎた。野田政権で副総理となった岡田は丹羽が大使として機能していないことを暗に認め、周囲に「政権交代のコストだ」と洩らしているという。

寄せ集めの民主党内では、党内が割れることを恐れ、まともに外交が議論されてこなかった。結果、民主党外交は外国勢力に対する警戒心が希薄となり、特に中国に対しては「外務省を通さず、それぞれの議員が直接在日中国大使館などと交渉したがり収拾がつかない」(日中外交筋)という。結局、民主党の稚拙外交によって、深刻な実害を招いてしまったのである。


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