食糧メジャー----②

IBP(アイオワビーフパッカーズ)を買収したタイソン・フーズはマクドナルドのチキンナゲットとケンタッキーフライドチキンの大半を供給し、自社契約の養鶏農家を数千人規模で抱えている。農家のフランチャイズ制度とも言うべきシステムで、独立農家を夢見る人々が殺到した。ところが、15万ドルを投資し、25,000羽の鶏を育成して得られる契約農家の平均年収は12,000ドルでしかない。

結果的にタイソン・フーズの奴隷になった契約農家も悲惨だが、もっと悲惨なのはまっとうな養鶏農家である。彼らが育てる健康でおいしい鶏は、タイソン・フーズの奴隷農家の存在によって、まともに取引されることもなく、売れたとしても半値以下に買い叩かれる。健康な鶏肉をつくればつくるほど莫大な赤字が出るのである。

事実私は今年何年かぶりで、ケンタッキーフライドチキンをつまみに晩酌したのだが、その余りのまずさに一口で止めてしまったことを思い出す。日本の居酒屋の焼き鳥のほうがはるかに旨い。しかも安い!養鶏に限らない。小麦農家、ジャガイモ農家にもタイソン・フーズ同様のシステムが存在するのである。

カーギルアイオワ州の小さな穀物商だったが、19世紀の終わり頃に次々と穀物倉庫を買収し、99年にはコンチネンタル・グレインを買収。遺伝子組み換え種子を販売する世界最大の種子メーカー「モンサント」などを傘下に置き、09年の売上は1,166億ドル、純利益は33.3億ドル、世界67ヵ国に1,100拠点を持ち、事実上世界の小麦を牛耳っている。

尚、ドイツの敗戦後、「IG・ファルベン」を接収した米国陸軍はベトナム戦争枯葉剤をバラ撒いた。その枯葉剤を製造したのがロックフェラー財閥の中核をなす「モンサント」である。また、第二次世界大戦中「IG・ファルベン」はアウシュビッツで使用した毒ガス「チクロンB」を製造していたことを付け加えておきたい。

ランドアップという強力な農薬をバラ撒き、農場渡り労働者と呼ばれる、メキシコなどから不法に入国した人々をこき使って収穫する。利に聡い農場主は寡占化していく大手食品加工企業と組んで近隣の独立自営農家の農場を買収し、やはり巨大化していく。彼等は農場渡り労働者を集めて働かせる「奴隷商人」でもある。

米国は巨大資本「食糧メジャー」を手に入れるために大きな犠牲を払った。製造業の崩壊である。「メイド・イン・ジャパン」の躍進が原因ではなく、米国内の劣化である。英国紙ガーディアンは、「世界の食は巨大企業に支配されている」として

「30の企業が世界の加工食品の3分の1を支配。5つの企業が世界の穀物貿易の75%を支配。6つの企業が世界の殺虫剤市場の75%を支配。2つの企業が世界のバナナの売上の半分を支配。3つの企業が世界の紅茶貿易の85%を支配。米国の会社ウォールマートはメキシコの食品卸売りの40%を支配している」と伝えた。(05年1月27日) つまり、グローバル化とは1%の利益のために99%が奴隷化することである!!


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