食糧メジャー----③

モンサントの種子には除草剤「ランドアップ」の耐性遺伝子が組み込まれている。農家は飛行機で種子をバラ撒いたあと、ただ放っておくだけでいい。雑草が生えた頃にまたランドアップをバラ撒く。雑草はすべて枯れてモンサントの種子だけが耕作地で青々と茂る。それを巨大な耕耘機で一気に刈り取る。モンサントの種子は従来の種子より麦一本につき20〜30%も多く実がつくのである。しかし豊かな大地は化学肥料がなければ育たない痩せた農地となった。

一方、水田による稲作では殆ど大地は疲弊しない。水田は全く化学肥料を与えなくても7割の収穫が期待できる。水田に引いた水は豊かな山の有機物を含み、その有機物によって微生物が発生して昆虫が増える。その虫を食べに鳥たちが集まり増えていく。その鳥たちがあちこちでバラ撒く「糞」が豊かな生態系をつくる。そして収穫後の田んぼに根粒菌の力で肥料となる窒素を取り込むクローバーやレンゲを植えて春に一緒に耕せばそれで十分なのである。

市井の米作研究家故・岩澤信夫が考案した稲作方法は、ある程度成長させた強い苗を田んぼに植えることであった。それを実行すると化学肥料を一切使わなくても、稲はグングン成長し、虫害や病害、冷害や台風にも強く収穫量までも跳ね上がったのである。

理由は簡単だった。田んぼが耕されていないので稲は必死になって根を張る。根の量が増えれば栄養もしっかり吸える。農薬を撒かないので益虫や益鳥が増える。病気も稲自体が健康なので、多少の被害を受けようが自力で治してしまうようである。

さらに秋に抜いた水を冬に入れて、そこに余った藁を入れて肥料にするつもりだったが、鷺や渡り鳥が集まり田んぼの生き物や魚を食べる。そして糞をする。しかも刈り取った稲の根っこが分解されるので、これまた栄養が増える。翌年の収穫高はもっと良くなった。これが「不耕起栽培」の一つ「冬期湛水法」である。94年に完成した。

佐渡島のトキ保護センターでは人工繁殖に成功し、放鳥して自然繁殖する段階にきていた。ネックとなったのが、トキの餌となるカエルや小魚が少ない点だった。そこで保護センターの職員が不耕起栽培と冬期湛水法に目をつけ、佐渡島の農家に導入を促した。農家がそれをやってみたら、田んぼの作業は格段に楽になった上、収穫まで増えたのである。この米は「トキ」の舞う田んぼのお米として「ブランド米」となって全国で人気となった。

小麦粉やトウモロコシは使い勝手が良く、それが世界化した理由である。01年山形大学の研究チームがパンにできる「米粉」の開発に成功した。これで日本式水田を世界へ広めることができるということである。


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