非正規労働者の救済

12年12月26日に発足した第二次安倍内閣は、相互に補強しあう三本の矢を一体として推進し、20年にわたるデフレからの脱却を現下の最優先課題とした。第一の矢の大胆な金融緩和と、第二の矢の機動的な財政政策によって円安となり、一年前の日経平均株価は9,000円程度だったが、今や14,000円に上昇し劇的な変化をもたらした。しかし第三の矢である民間投資を喚起する成長戦略には、大きな疑問を抱かざるを得ない。

それは13年1月23日に第一回目が開催された産業競争力会議の民間議員の中に、米国の金融マフィアの代理人であり、過激なグローバリストでもある竹中平蔵が含まれていたからである。同年4月3日に竹中は、公的インフラの運営権を民間企業に売却すれば、数十兆円が捻出できるとし、地下鉄、空港、高速道路だけでなく上下水道の売却まで求めた。つまり日本の水を「水メジャー(外資)」に売却しろと言ってのけたのである。

日本の水道局はトイレの下水にまでミネラルウォーター並みの過剰品質を提供している。この過剰品質を改めるだけで簡単に水道料金を安くでき、負債を肩代わりして運営費を地方自治体に支払うことができる。水道だけでなく、電気、ガス、交通インフラも世界水準の品質に下げていけば、いくらでも安くなるのである。06年フランスの「ヴェオリア」はじめ、水メジャーによる蚕食は既に始まっている。

そもそも、デフレとは物価下落スパイラルだけでなく、それに伴って賃金も下落する現象である。世界大戦の主因がデフレ景気であったことを顧みれば、平和維持のためにどうしても克服しなければならない課題である。デフレから脱却するには、物価以上に賃金を上昇させ、旺盛な個人消費を促進して内需を拡大させることである。

ところが第三の矢の成長戦略はグローバル化や、配偶者控除の縮小・廃止による女性の社会進出促進、閣議決定された労働者派遣法改正など、労働者の競争激化と低賃金の固定化に繋がる企業優先のデフレ促進策ばかりが検討されている。つまりグローバル化による激しい競争に、企業が生き残るためには、コストである賃金の低減化が不可欠と言っているのである。

そこで私は非正規労働者や長期アルバイトのセーフティネットを構築し、彼等に生きる希望を持ってもらうことであると考える。まず彼等の使用者に、全国各所に散在する空家を利用して、無償で入居させることを義務づけること。次は彼等の賃金の不足をどうカバーするかだ。

15年の高齢者への年金給付額は56.5兆円と見込まれている。この10%を観光地の宿泊や健康ランド等の利用など現物給付すれば5.65兆円もの内需が創出される。その現物給付を通常の9割で実施してもらい、1割の5,650億円を厚労省は「非正規労働者救済基金」(仮称)に送金するのである。基金受給者は未払いや滞納した年金保険料を完済・完納するという仕組みは如何であろうか?彼等を救済することが内需を高めることを認識すべきである。


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