ロスチャイルド家とは--⑬

ロスチャイルド家を中心とするグローバル資本は、大戦によって荒廃したヨーロッパの復興・経済成長に備え、欧州連合(EU)を提唱しドイツ産業資本と結び付いた。98年6月彼等はロスチャイルド家発祥の地、フランクフルトに在るその敷地に欧州中央銀行(ECB)を設立。財政均衡を掲げ、ドイツ経済に有利な低金利政策を採った。さらに99年1月ドイツマルクのレートを極端に安くしてユーロ導入を決定した。

関税ゼロ、為替変動なしというEU市場でドイツは一人勝ちとなった。海外にも輸出を伸ばしドイツGDPの42%を占めるようになった。因みに日本は13%、米国は8%である。ではドイツ国民は幸せか?「ノー」である。移民受入れ国世界第二位となったドイツ人の賃金は、安い労働力の流入でドンドン低下した。真の勝利者はグローバル資本なのだ!日本も戦後の人手不足が悩みだったが、生産性向上によって高度成長を成し遂げた。

スペインは86年のEU加盟により、潤沢なEU補助金を戦略的に使い、特に90年代後半からは劇的な飛躍を遂げた。さらにユーロ導入後は、低金利と移民流入に支えられた建設ラッシュと不動産価格高騰により、年平均4%のGDP成長率を記録した。ところが07年、国内不動産市場のバブル懸念と米国のサブプライムローン問題から、ゼネコンや不動産関連株が急落し、先行き懸念が高まった。

ギリシャは債務が多いためユーロ統合条件を満たせず加盟できなかった。そこでゴールドマン・サックス(以下G・S)は、ギリシャの将来の空港税や公営宝くじ収入を担保に数十億ドルの資金を極秘に提供した。ギリシャはそれを借入ではなく、通貨スワップとして簿外処理した。こうしてギリシャは表面上、財政を健全化させユーロに移行できたのである。このシナリオを書いたのがG・Sで、01年だけで3億ドルもの手数料を得たという。

09年10月新首相となったパパンドレウ(密約当時外相)は「前政権は3,000億ドルに及ぶ財政赤字を隠蔽していた」と公表した。格付け会社ギリシャ国債の格下げを数度にわたり行いギリシャ危機が起った。G・Sは通貨スワップが終了する10年には財政破綻すると百も承知していた。G・Sを筆頭とするグローバル資本は、「ギリシャ国債空売り」と「CDSの売買」を通じて二重に巨利を得たのである。

11年5月17日EUの会議で財務相らは、ECBの新総裁にイタリア中央銀行総裁のマリオ・ドラギを全会一致で選出した。ドイツ連銀総裁だったウェーバーが11年のはじめまではECB総裁の本命であったが、2月ウェーバーは突如、連銀総裁の辞任を発表しその芽は消えた。ECBがギリシャ国債を買付けることを決めた時、唯一反対したのがウェーバーである。尚、新総裁のドラギは02年〜06年までG・Sの欧州部門の副会長であった。

14年5月22日から25日にかけて欧州議会選挙(定数751)が行われた。欧州統合を推進する二大会派(EPP及びS&D)が、398で引続き過半数を超えたが、欧州統合に懐疑的な政党の議席数も二倍以上となった。フランス選挙区で圧勝したのは、移民受入れや欧州統合に反対するマリーヌ・ルペンを党首とする国民戦線(FN)である。フランスに配分されている74議席中24議席を獲得した。英国でも反EUを掲げる英国独立党(UKIP)が、デンマークでも移民受入れに反対するデンマーク国民党が首位となった。


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